タイトル
ココヤシ Cocos nucifera


 海流散布植物の代表といえば、椰子の実、つまりココヤシだ。このコ
コヤシ、島崎藤村の詩でも知られるように、日本にも数多く流れ<着く。
沖縄などに行けば浜辺で割と普通に見ることができるし、関東周辺の海
岸でも漂着が確認できる。僕自身はまだ見たことがないけれど、漂着し
て芽生えているものもあり、以前に茨城県波崎町で出会った地元の人の
話では、家に持ち帰って育てる人もいるとのことだった。長い漂流後に
も発芽可能な秘密は、ココナツ・ジュースにある。ココヤシは内果の中
にあるこのジュースの水分が減り、チーズのように固まってから初めて
発芽可能となるという。つまり実が熟して落下してからも、一定の期間
陽にさらされるなどしないと発芽できない仕組みなのだ。この不思議な
生態からも、ココヤシは海流散布植物の代表に相応しい気がする。  
        
タイトル タイトル
   漂着(左・茨城県波崎町、右・西伊豆黄金崎)
   完全なものも壊れてしまったものも流れ着く。ココナッツ・ジュースを飲んだ後のゴミが流れ着くことも。


  
タイトル
                     ヤシの生える南の島の夕暮れ

 ココヤシは実は食料や飲料、また様々な工業原料に、葉や茎は建築材
になるため、世界中の熱帯域で広く栽培されている。あまりに古くから
ら栽培されていたため、その起源すら定かではない。現在の研究では、
インドネシアやポリネシアなどが起源と考えられているが、人の移動と
ともに持ち運ばれ、そしてもちろん海流散布の結果として、世界各地に
広まったと考えられている。                   


確認地:沖縄県西表島ほか、鹿児島県屋久島、西伊豆黄金崎
東京都八丈島、茨城県波崎町              


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