貝は貝でも…2
貝のあるウミウシ? Cephalaspidea


 近年、ウミウシという生き物がダイバーの間で人気を集めている。
姿形がさまざまで体色も色鮮やかな、何とも不思議な生き物。実はそ
のウミウシ、貝殻を持たない貝の仲間で、巻き貝に近縁の生き物なの
だ。ところが、さらに不思議な生き物…体のつくりはウミウシに近い
のに貝殻を持っている…という中途半端(?)なヤツもいる。巻貝類
の中の頭楯類と呼ばれる貝のグループで、ちょうど巻き貝とウミウシ
の間を埋める存在だ。中には、中途半端どころか見事な完成度の美し
い貝殻を持つものがいて、驚かされてしまう。          


     
タイトル  ベニシボリガイ Bullina lineata

 名前の通り、白地に紅色の絞り模様が入った、きれいな
 貝殻を持っている。普通の貝殻に比べると薄質で、海岸
 で拾うのはまず無理だろう(拾ったことはあるが、割れ
 ていた)。写真のものはダイビング中に拾ったもの。関
 東南部や伊豆半島でも見られ、転石のある砂地にすんで
 いる。軟体部は白くて縁がヒラヒラとしていて、意外に
 きれい。粘液で砂のベールを作り、それを被るようにし
 て砂に潜る。貝殻も魅力的だけど、動物としてもなかな
 か興味をそそられる存在なのだ。          
     
タイトル  オオベニシボリガイ Bullina nobilis

 このHPに掲載しているモノたちは、全て自分で拾得し
 たか写真を撮影したものだが、これは唯一と言ってもい
 い例外。友人のダイビングガイド氏がわざわざ送ってく
 れたもの。上のベニシボリガイに似ているが、紅色の筋
 模様はご覧の通りより密になっている。貝殻の質も、や
 や丈夫そう。ガイド氏が見つけたときは死んでまだ間も
 ない時だったらしく、貝殻の中に軟体部が残っていて、
 かなり臭かった。貝殻も小さいし、薄質なので取り除く
 のにかなり神経を使った。             
     
タイトル  ミスガイ Hydatina physis

 関東南部でもよく見られる頭楯類で、磯遊びなどでも見
 るこがある。貝殻を海岸で拾う機会も比較的多い。繊細
 な筋模様の貝殻は、小さいうちはかなり薄質。大きくな
 ると多少は丈夫になるけれど、殻口などはやはり欠けや
 すいので注意が必要。軟体部は白から紫色がかった色で
 縁がヒラヒラとしたドレスのようで美しい。よく見ると
 軟体部の前端に小さな黒い眼点が2つあり、マンガのキ
 ャラクターのような可愛い顔になっているのが笑える。
     
タイトル  ベニヤカタガイ Hydatina amplustre

 ずっと憧れていた貝で、手に入れてからはもちろん大切
 な宝物。大胆な色と模様なのに派手すぎることなく、可
 愛らしい雰囲気を保っている希有な貝殻だ。拾得地は八
 丈島で、ダイビング中に見つけた。生きているものはす
 ぐに見ることができたのだけど、貝殻はやっと1個だけ
 確保。貝殻はとっても薄質なので、ダイビング中は壊し
 たりしないかと気が気ではなかった。できれば、もう何
 個かは拾っておきたいと思う。           
     
タイトル  ナツメガイ Bulla vernicosa
 
 同じ頭楯類でも、科が違えば特徴もかなり違う。このナ
 ツメガイは、ベニシボリガイなどに比べると貝殻が厚く
 て丈夫。名前の通り、貝殻はナツメの実にそっくり。夜
 行性なので生きた姿を見る機会は少ないが、浅い水深に
 すんでいるため貝殻は海岸によく打ち上がり、沖縄では
 普通に拾うことができる。数が多いので、質のよいもの
 を選んで拾える。                 
     
タイトル  コナツメガイ Bulla punctulata

 ナツメガイに似ているが小型で、黒っぽい斑模様が混じ
 る。図鑑によると潮通しのよい水路などにすんでいると
 いうことなので、ナツメガイとは棲み分けているのだろ
 う。正直言うと、初めのうちはナツメガイの小さいのだ
 ろう…くらいにしか思っていなかった。こんなページを
 作らなければ登場しないだろう、そんな存在かな。  
 (ごめん)                    
     
タイトル   ブドウガイ  Haloa japonica

 温帯域の浅い海にすんでいるようで、海岸で貝殻を拾う
 ことができる。とは言っても、からはとても小さい上に
 半透明なので、よほど注意して探さないと見落としてし
 まうだろう。軟体部は茶色の斑模様で、半透明の殻から
 体の色が透けて見える。名前の由来はわからないけれど
 体の模様がブドウ?分類はブドウガイ科になるが、カイ
 コガイと同じタマゴガイ科にする研究者もいるようだ。
     
タイトル  カイコガイ Atys cylindricus

 アマモなどが生える砂泥底の場所にすむ頭楯目で、沖縄
 に行けばわりと普通に拾うことができる。名前は真っ白
 な貝殻をカイコの繭に見立てたものだろう。ナツメガイ
 やコナツメガイなどと同様に、貝殻は厚くて丈夫。それ
 と言って特徴もないので正直なところあまりパッとしな
 い。せめて微細な模様でもあればいいのだけれど…(勝
 手な言いぐさだけどね)。             

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