カニかに BRACHYURA

 カニは節足動物門甲殻綱の生き物で、エビやヤドカリとともに十脚目
というグループをつくる。十脚目はさらに形態によって分けられ、エビ
は長尾亜目、ヤドカリは異尾亜目、そしてカニは短尾亜目というグルー
プになる。カニは種類によって形態に多少の差こそあれ、固い甲羅に1
対のハサミ脚、4対の歩脚があり、誰でもそれがカニだとわかる。カニ
は脱皮をするので、海岸にはその脱皮殻が打ち上がることが多い。脱皮
殻は、きれいに甲羅も脚も残っているので種類を判別しやすく、中身が
ないので保存するのにも便利だし、甲羅の形や模様は個性的で楽しい。


     
タイトル   キンセンガニ Matuta victor

 海底が砂地の海で普通に見られるカニ。ごま塩模様と、
 左右にトゲが1対突き出る甲羅は特徴的で、見分けも簡
 単。歩脚の第4脚は泳ぐためにヒレ状になのも特徴だ。
 季節によってはたくさんの脱皮殻が打ち上がることもあ
 り、浜辺で拾えるカニでは一番ポピュラーな種類かもし
 れない。ただし、甲羅はけっこうもろく、気をつけない
 と壊してしまうので要注意。波打ち際で生きたもの(た
 いてい小さな子ども)を見かけることもあるけれど、昼
 間は砂に潜っていることが多いようだ。       
 
   

タイトル   イシガニ Charybdis japonica

 磯遊びなどをしているとよく見かけるカニ。磯で見られ
 るカニとしては大型の部類なので、ついつい追いかけ回
 してしまう。ただし、捕まえようとすると、ハサミ脚を
 振り上げて激しく威嚇する気の強さも持っている。生息
 環境は幅広く、磯だけでなく砂底や転石底、干潟でも見
 られるから、打ち上がる場所も多様なはず。写真の個体
 はこの種の最大サイズに近いはず。見栄えはしたけれど
 脱皮殻ではなく中身入りだったから、とても臭かった…

 
   

タイトル  モクズガニ Eriocheir japonicus

 ハサミ脚に長い毛が密生しているので、「藻屑」の名前が
 ある。実はこのカニ、海のカニではなく川のカニ。ではな
 んで海岸に打ち上がるかと言えば、このカニは秋に産卵の
 ために川を降り、しばらく磯や河口、汽水域などで過ごす
 ためだ。産卵はエネルギーを使う大仕事だから、力尽きて
 しまうものもいるのだろう。神奈川県南部には、まだこの
 カニが生息できる環境がわずかに残っている。昔は産卵の
 ために川を降るこのカニを捕らえ汁などにして食べていた
 のだが、今時の都市近郊ではそんなことをする人もいない
 だろう。このまま細々とでも、生き長らえてほしい。  

 
   

タイトル   カルイシガニ?

 パッと見、特徴的だったので、写真を2枚ほど撮っただ
 けだったのだが、図鑑を見てもいまいち正体がよくわか
 らない。一番印象の近いカルイシガニと仮にしておきた
 い。とにかく甲羅がはっきりと領域に分かれていること
 甲羅の表面や縁、歩脚の縁に鋭いトゲが生えていること
 が大きな特徴だ。生態写真の図鑑ではなく、標本写真の
 図鑑を見れば、きっとコイツの正体もわかるだろう。図
 鑑を手に入れるまでの宿題としておこう。      

 
   

タイトル   スベスベマンジュウガニ Atergatis floridus

 磯などでよく見られるオウギガニの仲間。楕円形で滑ら
 かな甲羅が特徴で、名前が「すべすべ」と言うのもよく
 わかる。また、このカニは毒があることでも有名で、そ
 の毒は加熱しても毒性が失われない。食べると危険…と
 本などに書いてはあるが、「こんなカニ、誰が食べるの
 か…」とも思う。でも、磯などに来ると、すぐに何か捕
 まえて食べようとする連中がいるから、注意書きもやは
 り必要なのか。磯やその周辺の浜辺によく打ち上がり、
 脚が取れて甲羅だけになって転がっているものが多い。

 
   

タイトル  ノコギリガニ Schizophrys aspera

 だと思う。ハサミ脚も歩脚もほとんど取れてしまってい
 て甲羅だけになって落ちていた。生息環境が岩場なので
 おそらく自然に打ち上がったものではなく、漁師さんの
 網にかかって捨てられたものだと思う。ただ、比較的浅
 い水深から生息しているカニではある。体は茹でなくて
 も鮮やかな赤。甲羅の縁には名前の由来でもあるノコギ
 リ状の鋭いトゲが並んでいる。まだ生きたものを見たこ
 とはないが、水中で出会っても楽しそうなカニだなぁ。

 
   

タイトル   ヒラコブシガニ Philyra syndactyla

 コブシガニの仲間は、砂底や砂泥底の海にすむ代表的な
 カニ。丸い甲羅が特徴的で、名前もそれに由来するのだ
 ろう。コブシガニの仲間は何種類かいてどれもよく似て
 いるのだけれど、本種は他種に比べてハサミ脚が長いの
 が特徴といえるだろう。本種についてはあまり資料がな
 いのだけれど、やや外洋に向いた海岸に多いようだ。神
 奈川でも千葉の外房(九十九里)でも見たことがある。
 *今までマメコブシガニとしていましたが、訂正します。
 
   

タイトル ヘリトリマンジュウガニ Atergatis reticulatus

 オウギガニの仲間では、スベスベマンジュウガニに次い
 でよく見かけるカニ。名前は甲羅の前縁に「縁取り」が
 発達していることに由来する。甲羅は赤く、しわが深く
 てザラザラした感じ。一目でスベスベマンジュウガニと
 区別できる。稀に見かけるアカマンジュウガニとは見分
 けが難しそうだけれど、自分の印象では本種の方がやは
 り甲羅のしわが深いように思えた。甲羅はけっこう固く
 て、なかなか格好いい(?)感じ。         

 
   

タイトル  NEW!
  タイワンガザミ Portunus pelagicus

 ガザミとともに「ワタリガニ」と呼ばれ、和食に中華、
 イタリアンと、どうやって食べても美味しいカニ。写真
 はオス。カニといえばズワイガニや毛ガニを想像する人
 には、この派手な色彩のカニが食用になるとはとても思
 えないだろう。内湾の砂泥地などに多く、砂に潜ってい
 ることも多い。移動するときは、ひれ状になった4番目
 の歩脚を使って器用に泳ぐ。ガザミの仲間は甲の縁にギ
 ザギザがあって格好もよく、拾って嬉しい甲だ。中でも
 このタイワンガザミは色彩も美しいので、海岸で見かけ
 たら、ぜひ手にとって見てみてほしい。       

カニ以外の甲殻類はこちら…

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